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相続人に未成年の子がいる場合に気を付けたいポイント

相続はただでさえ大変な手続きですが、相続人に未成年の子がいる場合は裁判所に特別代理人選任の手続きを行う必要があり、より複雑になります。今回は、相続人に未成年の子がいる場合の相続手続きで、特に気を付けていただきたいポイントについて解説していきます。

特別代理人選任とは

相続人に未成年の子がいる場合、その子の代わりに親権者が遺産分割協議書に自署・押印をして相続手続きをすすめる、ということはできません。

これは「利益相反行為」となってしまうからです。

利益相反行為とは裁判所のHPには次のように書かれています。
「例えば、父が死亡した場合に、共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議など、未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為のこと」と。

そのため、裁判所で特別代理人選任の手続きを行う必要が出てきます。

親権者ではない者でその子の代わりに遺産分割協議を行うとなると、おじやおばなどの身近な親族が選任されるケースが多いです。

そしてこの手続きに必要な提出書類のひとつに「遺産分割協議書案」がありますので、それまでに誰がどのように財産を分けるかを決める必要があります。

財産目録の作成

亡くなった方の財産を把握するには財産目録を作成します。

作成には以下のような資料が必要になります。
・不動産の名寄帳
・金融機関、証券会社の残高証明書
・受け取った生命保険金の明細
・債務、葬式費用の領収書 など

ひとつひとつの資料をどのように揃えていくのか確認していきます。

不動産の名寄帳は、不動産がある市町村で取得できます。
所有している不動産がすべて記載されているので、財産漏れの心配はありません。

金融機関の残高証明書は、取引のあった金融機関で取得します。
その際に戸籍謄本など、亡くなった人の相続人であることの証明などが必要となります。
この残高証明の取得にはそれぞれの金融機関の窓口に行く必要があり、手続きにそれなりに時間がかかります。

証券会社と取引があった場合は、その取引のあった支店の担当者に連絡することや、HPなどに相続手続きのフリーダイヤルがあるのでそちらで手続きを進めます。基本的には書類を郵送でやり取りすることが多いと思います。そのため、手元に残高証明が揃うまでに1週間から2週間ほどかかります。

生命保険は、保険証券などに記載されている連絡先に連絡をして手続きを進めます。
送付されてくる請求書類に記入し、必要書類を添付して提出をすると保険金が振り込まれ、明細書が届きます。振り込まれる生命保険金は当面の生活費としても有効なものとなります。

相続税の確認における注意点

財産が把握できると気になるのが相続税です。

相続人に未成年の子がいる場合によくある注意点について、次のようなケースでみていきましょう。

夫が亡くなり、相続人は妻と子2人(長男、二男)です。
相続税の基礎控除額は4,800万円になります。

財産は以下のとおりです。
自宅の土地と建物…3,000万円(住宅ローン残り2,000万円)
金融資産…1,000万円
死亡保険金…3,000万円
死亡退職金…500万円
会社より生命保険金…1,000万円

自宅の土地と建物は、住宅ローンを控除すると1,000万円です。
金融資産はそのまま1,000万円です。

死亡保険金は非課税限度額があります。
500万円×法定相続人の数です。
今回は1,500万円が控除できますので、財産額は3,000万円-1,500万円=1,500万円となります。

死亡退職金にも非課税限度額が死亡保険金と同様にあります。
そのため今回は0となります。

会社より受け取った生命保険も死亡保険金と同様に扱います。
すでに非課税限度額を控除しているので、そのまま財産1,000万円となります。

そうなると合計が1,000万円+1,000万円+1,500万円+1,000万円=4,500万円です。
相続税はかからないから安心!となりました。

しかし、ここで注意してもらいたいことがあります。
住宅ローンについてです。
住宅ローンでは契約者が亡くなった場合、住宅ローンの残高が0になる「団体信用生命保険」というものがあります。これが適用されると住宅ローンの残高は0になり、財産額から控除することができなくなります。

先程の計算で住宅ローンの2,000万円の債務がなくなると、土地と建物の3,000万円が財産となり、財産額の合計は6,500万円、相続税がかかることとなります。

相続人に未成年の子がいる場合は、多くが子育て世代であり住宅ローンは団体信用生命に入っていることがほとんどです。亡くなったときにその債務はなくなるため、不動産の評価額はそのまま財産になると考えてください。

もし、相続税が発生する場合で妻がすべて相続するとなれば「配偶者特別控除」があります。
1億6,000万円もしくは法定相続分まで財産を相続しても、それに係る相続税は控除されます。
そのため、先ほどの例のような家庭の場合は、相続税が出るとしても配偶者がすべて相続するなら、相続税の心配はないということになります。

気をつけるポイント

上記の事を踏まえて気をつけるポイントを整理していきます。

・申告期限は10ヶ月
相続税の申告は亡くなってから10ヵ月という期限があることを頭に入れておいてください。
特別代理人選任の手続きに向けて、財産を確認する資料を集め、遺産分割協議の案を考え、相続税の納税はどうなるか、と考えているうちにあっという間に期限が来てしまいます。

・優先順位に注意する
相続人に未成年の子がいる場合には、誰を特別代理人に選任するかということが気になります。
もちろん事前に代理人候補に打診するのは必要なことです。
しかし、遺産分割協議案が作成できてからの話になりますので、優先順位に注意しましょう。

・財産の確認には時間がかかる
財産目録を作成する際に必要となる書類を集めるには時間も手間もかかります。
とくに共働きの家庭に相続が発生した場合には、金融機関の営業時間に合わせて仕事を調整することが必要になってきます。共働きでなくとも書類を集めるだけでも時間がかかりますので早めの行動が必要になります。

・財産額に大きく影響するものがないか
前述の団体信用生命保険のほかに、未成年の子がいる世代は家族のために、会社は遺族のために手厚い生活への保障の準備をしていることが多いです。多額の保険金が発生した場合、財産額が相続税の基礎控除額を超える方もいらっしゃいます。このあたりにも注意が必要です。

まとめ

万が一配偶者が亡くなった場合、毎日が慌ただしく過ぎていくと考えられます。
失意の中で、10ヵ月という期限の間に相続手続きを進めていく必要もあります。
また特別代理人選任手続きなど、慣れない手続きには不安も大きいはずです。

そんな時にはぜひ専門家を頼っていただきたいと思っています。

私どもは税理士事務所ですので、相続手続きや相続税の申告を専門で行っております。また、弁護士や司法書士等の専門家とも提携を結んでおりますので、各種法律行為が必要になった時も安心です。

これから何をする必要があるのか、どんな順番で進めていけば良いのか。相続税が発生するのかしないのかの計算もすぐに概算計算が可能です。相続税が発生する場合には10ヵ月の期限までのスケジュールを一緒に段取りし、不安をひとつひとつ解消しながら一緒に相続手続きを進めてまいります。

相続人に未成年の子がいる場合はもちろん、相続人に未成年の子がいらっしゃらない場合でも何か気になる事がございましたらどうぞ気軽にご相談ください。