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遺産分割協議をスムーズにまとめるために大切なこと

相続においてとても重要なことは、遺産分割協議が円満にまとまることです。スムーズにまとまることもあれば、相続人同士の意見が合わずもめてしまうケースもあります。今回ご紹介する事例は、もめ事があったわけではありませんが、遺産分割に長い時間を要することになったケースとなります。

自宅は誰が相続する?

父が亡くなったと相談に来られたお客様。
相続人は長男と長女の二人です。

相続財産は、父が住んでいた自宅の土地と建物、有価証券と預貯金があります。

長男は独身で子どもはおりません。
父の自宅を離れ一人暮らしをしており戻る予定はありません。

長女は結婚して子どもがいます。
夫が建てた持家で暮らしています。

そのため父の自宅をどちらが相続するかを決めるのは難しいことでした。
相続した後のことまで考える必要があります。

そこで、考えられる選択肢をすべて挙げて検討していくことにしました。
 
 

相続人ごとに検討する

まず長男が相続した場合のことを検討しました。

長男は現在遠方に住んでおり、自宅を相続しても住む予定がないので空き家になります。空き家でも管理する必要はありますので遠方より何回も自宅を訪れる必要があります。大きな負担になることが予想されました。

そのため自宅を売却することも検討しておきました。自宅の売却代金については、自宅を相続した人の所得になります。相続したものを将来売る予定というのであれば、不動産も預貯金と同じ価値と考え、一人で相続するのか、長女と分けるのかどうかも再度検討する必要が出てきます。

思い入れが強く、売却を望まない場合にはどう考えるべきでしょうか。
その場合、長男が亡くなったときのことを考えます。亡くなった時点で独身の場合、相続人は兄弟姉妹です。長男の財産は長女が相続することになります。そうであるならば、父の相続の時点で長女が相続すれば、長男の財産が増えて長男に相続税が発生する可能性も低くなりますし、相続登記も長女の1回で済みます。

次に長女が相続した場合のことを検討しました。

長女もすでに持ち家があるため、相続した自宅は空き家になります。長男の場合と同様に、売却の検討もする必要があります。

長女の場合は子どもがいますので、子が将来そこに住むことも考えられます。子の年齢によってその可能性があるかどうかも検討します。まだどうなるかわからないという場合は、相続した自宅を売却し、その資金で子の住む家を建てる援助をしてあげるなどすることもできます。

どの方法が最適か、将来的に良い結果になるのか、二人で話し合いをしていただきました。

結論が出るまでに半年ほどがかかりました。相続税の申告期限は、被相続人の死亡日の翌日から10カ月ですので、結論が出てから手続きを始めることになり、非常にタイトなスケジュールとなってしまいました。

二人とも相続した自宅には住まないということで、売却することにしました。
そして売却代金は二人で分けることに決め、持分2分の1ずつ相続することになりました。
残る預貯金についても2分の1ずつ相続することになりました。
 
 

分割協議書の記載方法も検討する

上記のような、不動産を持分2分の1ずつ相続するケースでは注意する点があります。

二人で相続したのち売却する場合、売買契約は二人で行う必要があります。もしどちらか一方が売却することに反対した場合は手続きが進まなくなります。

相続した二人にそれぞれ子どもがいる場合などはさらに注意が必要です。不動産が売却できずそのまま共有で持ち続け、どちらも亡くなってしまった場合は、その子ども同士で持ち合うことになります。親戚同士の付き合いがあればいいですが、疎遠になっているケースもあります。そうなると売却の話や契約などはさらに難しくなっていきます。

どちらか一方がその持分を買い取って欲しいなどの相談があるケースもあります。相続した時には問題はなくても、将来問題になるということがあります。

不動産の売却を前提としている場合、遺産分割協議書の記載の仕方を「換価分割」にする方法もあります。「換価分割」とは、上記のような「持分」で分けるのではなく、誰か1人が相続人を代表して相続し、その方が売却を行い、諸経費、税金などを差し引いた金額を、決定した割合で他の相続人に分配する方法です。

この場合でも、そもそも売れない場合は手続きが遅くなること、売れない間はその代表一人が管理しなければならないので大変になることも考えられます。ですが、相続人間でよく話し合い、管理には協力することなど決めることで、売却から分配までがスムーズになります。

今回のケースでは、協議の間に売却の目途が立ちつつあったため、持分2分の1ずつ相続するという選択をしました。
 
 

知っているようで意外と知らない相続のこと

今回の相談者は、遺産分割協議でもめたわけではありませんが、結論が出るまでに長い時間を要してしまいました。

振返ってみると、父が亡くなった際に自宅をどうするかについてはもっと前から検討できたとのことでした。

さらに相談に来られてからお話をしていくと、ご質問した内容が事前の検討事項として考慮されていなかったこと等、想定外の事項がけっこうあったご様子でした。

実際に相談者は、相続税のしくみについては知らなかったことが非常に多かった、次の世代のことまで考慮していなかった、相談していなかったら後々困ることになっていたかもしれない、もっと早く相談していれば良かった、と仰っていました。
 
 

まとめ

相続手続きは、一生のうちに何度もあることではありませんので、どんな方法があるのか、どの方法が最適なのかを知るのはなかなか難しいことです。

生前に準備しておくと良いことも多々ありますので、相続についてはぜひ早め早めに専門家に相談することを推奨しております。相続の相談に早すぎるということはありません。

相続における重要なウェイトを占める遺産分割協議をスムーズにまとめるには、早めの相談、検討、準備がポイントとなってきます。

木村美都子税理士事務所では、これまでの経験や知見をもとにご相談にお応えしております。無料相談も随時行っております。少しでも気になっていることがあれば、一日でも早くご相談にお越しください。