BLOG ブログ

相続人が親になる場合と相続放棄の関係

長男が亡くなったと母が相談に来られました。長男は配偶者と子はいませんでしたので、相続人は母1人となります。このように、親が相続人になるケースでは、相続発生後に早めに検討しておきたい大切なことがあります。

母の財産の把握

亡くなった長男の遺産は住んでいた自宅と預貯金があり、相続税の納税が少し発生する状況でした。

母には長男のほかに、長女と二男がいます。

相続人は母1人のため、遺産分割協議は必要なく、母が相続し相続税を納めるだけです。
長男が残した預貯金があるため、相続税の納税資金は特に問題ありません。

しかし相続が発生してすぐに、母が亡くなった時の相続のことを考えると、母の財産がどれほどあるのかを確認しておくことが重要となります。

母の財産には自宅と預貯金がありました。母が亡くなったと仮定した場合の相続財産を計算してみたところ、相続税の基礎控除額を超えないため相続税の申告の必要は無さそうでした。

ただ仮に亡くなった長男の財産を相続し母の財産に加算されたとすると、母の財産額は相続税の基礎控除額を超えることになり、長男の相続で相続税の申告をし、母が亡くなった時にも相続税の申告をしなければならなくなります。

連続して相続が起こった場合は「相次相続控除」という控除があり、母の相続の際、前回の相続税額の一部を控除できることもあります。

それでも相続税の申告は2回しなければならないということになり大変なこととなります。

相続放棄した方が良いのか

次に検討したいことは「相続放棄」についてです。

母が相続放棄をするとどうなるか考えてみましょう。

母には長男のほかに長女と二男がいますので、母が相続放棄をした場合、母は相続人ではなくなり、長男の兄弟姉妹である長女と二男が相続人になります。

母は財産を取得しません。長男の相続税は長女と二男が相続する預貯金より納税することができます。

また、母は財産を取得しないため財産は増えず、母が亡くなった時の財産額は相続税の基礎控除額を超えないため相続税の申告も必要ありません。

つまり、相続税の申告は長男の相続税の申告1回で終わります。

良いことが多く見えますが、相続放棄をする場合には注意点もあります。

相続放棄の注意点

死亡保険金があり、受取人が母になっている場合です。

母は相続放棄をしたため相続人ではありません。

相続放棄をしても死亡保険金は受け取ることができます。ただし死亡保険金の非課税の枠を利用することができません。

またその保険金が母の財産に加算されますので、相続税の基礎控除額を超えないか確認する必要があります。

次に相続放棄をすることにより、長女と二男は遺産分割協議をする必要が出てきます。相続税の申告期限は10ヶ月以内ですので、その間に分割協議が成立するのが望ましいです。自分が相続するとは考えていない場合は、急遽検討することになるため思ったよりも時間がありません。

相続放棄は3か月以内にしなければいけません。3か月という短い期間に色々な手続きをしながら上記のようなことを考え、相続放棄の決断をしなければなりません。

また相続放棄をするためには、母が長男の財産を相続していないことが条件です。相続人が母親1人の場合、遺産分割協議の必要がなく、戸籍謄本などの必要な公的書類があれば金融機関の解約もすぐに可能です。長男が亡くなった後、相続人は母1人だということですぐに手続きを進めてしまうと、その時点で母は財産を相続したことになり、相続放棄の手続きをすることができなくなります。

そうなると上記のような検討をすることもできません。
財産の相続手続きをしないことが相続放棄をするために重要となります。

まとめ

今回のケースでは相談に来られる前に、亡くなった長男の預貯金の解約手続きをすぐに行っていたため、相続放棄をすることができませんでした。

もし相続放棄をすることができた場合は相続税の申告は1回となり、相続税の納税の負担も軽くなったことでしょう。

もちろん母の財産や状況、長女と二男の状況によっては相続放棄をすることがベストではないこともあり得ます。あくまでも相談される方の状況によって検討する必要がありますのでご注意ください。

子が亡くなった場合にすぐに税理士事務所に相談しようと思う方は少ないかも知れません。

相続放棄ができる期間、条件、財産の状況把握といったことはかなり専門的な話になります。
だからこそ税の専門家である税理士事務所に相談することを推奨しております。

相続の相談は早ければ早いほど適切な準備や判断が可能となります。
木村美都子税理士事務所では随時相談をお受けしています。どうぞお気軽にご連絡ください。