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遺産分割協議中に相続人が亡くなってしまったら?

遺産分割協議中に、相続人が亡くなってしまう。そのよう想定外の事態が起こった時、どのような注意点があるのでしょうか。今回は実際にあったご相談のケースを通して、その注意点について解説していきます。

まずは財産を確認するところから

弟が亡くなったと相談に来られたのは姉。

弟には配偶者も子どももおらず、両親もすでに亡くなっていたため、相続人は姉と妹の2人です。

まずはいつものように弟の財産を確認するところからはじめました。

姉も妹もそれぞれ生活しているため、弟が取引していた金融機関や契約している生命保険などもわからず、弟の自宅の整理から始めることとなりました。

姉も妹も会社員のため平日に時間をとることが難しく、休日のたびに整理をすることとなりました。また弟は会社員でした。そのため会社より死亡退職金や生命保険の死亡保険金などが相続人に支払われます。それらの会社に提出する書類も多く、かなり時間がかかりました。

相続手続きに必要な戸籍謄本の取得や金融機関の残高証明の取得は平日、または郵送での対応となります。相続人が会社員の場合、財産の確認をするだけでもかなりの時間が必要になります。余裕をもって早めに行動することが重要です。

自宅は父母と同居していた姉が相続されていましたので、弟は不動産を所有しておりませんでした。そのため財産は金融資産のみでしたが、相続税の基礎控除額を超える財産額になりそうです。

遺産分割は次の相続も見据えて

相続財産の確認が終わり、遺産分割協議をすることになりました。姉と妹からはどのように相続すればよいかと話があったため、アドバイスをすることとなりました。

姉は配偶者と子がおらず、姉の相続人は妹1人となります。姉の相続財産は妹がすべて相続することになります。2人とも姉の相続の際には相続税の申告がないようにしたいという意向がありました。そのため、弟の相続の財産を相続しても姉の相続税の基礎控除額を超えないようにするため、弟に続いて姉の財産の確認を行いました。

姉は自宅の不動産と金融資産が少しある程度で、今亡くなった場合でも相続税の基礎控除額を超えないと思うと話されました。そうであるならば今後生活するなかで金融資産も減少することを考えて、弟の預貯金を少し相続してもらっても問題なさそうです。

どれほど相続するか検討するため取引のある金融機関の残高を確認することにしましたが、姉は通帳の記帳を数年前からしておらず、また見当たらない通帳もあるようでした。そのため、姉に残高証明を取得してもらった後に話をすることにしました。

相続人が一人になった場合の注意点

しばらくして妹から連絡が入りました。

姉が急に体調を崩し亡くなったとのことでした。突然のことで驚きましたが、相続税の申告もあるためしばらくして妹と打ち合わせを行いました。

相続人が2人から1人になったため、すべて妹が手続きをして、すべての財産を相続することになります。

「相続税の申告も納税も、私一人で行えばいいですよね?」

妹はそう考えられていました。しかし、ここで注意が必要です。

じつはこの場合、法定相続分で財産を取得したとして相続税の申告を行う必要があります。遺産分割協議が成立する前に相続人が亡くなった場合、その方が本来受け取るはずだった法定相続分を計算に含めなければならない、というルールがあるからです。

今回は、姉妹の2人でしたので、弟の財産を2分の1ずつ相続した、という前提で計算しなければなりません。金融機関の手続き上は妹がすべてを相続できますが、相続税の申告上は、いったん半分ずつに分ける必要があるのです。そうなると、注意すべきは姉の財産です。

弟の財産のうち、姉が2分の1を取得したとした場合、姉の財産は相続税の基礎控除額を超えてしまう可能性がありました。そうなると、弟の相続税だけでなく、姉の相続税申告も必要になってしまいます。

そのためすぐに姉の財産を確認しました。

弟の財産で金額が大きかったのは生命保険でした。そのほとんどの受取人が妹となっていたため姉が受け取った生命保険は少なく、残る金融資産の残高の2分の1が姉にいくことになりました。金融資産の額は定期預金が少しある程度でした。姉の財産とあわせても相続税の基礎控除額を超えることはありませんでした。

無事、弟の相続税の申告を終え、姉の相続手続きも完了しました。相続手続き中に相続人が亡くなると、その方の相続手続きも追加で行わなければならず、想像以上の時間と労力がかかります。

「もしも」を想定し、早めに行動を

今回のケースでは幸いなことに、姉の相続税申告は不要でした。

しかし、同様の事態は誰にでも起こり得ます。

例えば、高齢の父が亡くなり、相続人が高齢の母と子ども1人という場合。母が元気でも、いつ体調を崩してしまうかは誰にもわかりません。詳細な財産額が不明な場合でも、遺産分割協議を行い、母が相続しても基礎控除額を超えないような内容で、早めに書面を作成しておくことも検討すべきです。

相続の「もしも」は、早ければ早いほど、適切な準備や判断ができます。

お困りの際は、気軽に木村美都子税理士事務所にご相談ください。