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特例事業承継税制を活用した相続対策

平成 30 年に事業承継税制が利用しやすく改正されました。本税制の利用は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成された「承継計画」の提出が要件になっており、提出期限が令和 5 年 3 月末と迫っています。弊社は認定支援機関であり相談案件が増加していますので、今回はその概要や注意点等について説明していきます。

特例事業承継税制の概要

まず、特例事業承継の概要について説明していきます。

1.非上場株式等を一括贈与された際の贈与税は全額が納税猶予
事業承継に関する計画を作成し都道府県に提出、経営者が代表権を後継者に譲り後継者が代表権を持った後、経営者(先代経営者)が所有する株式等を一括贈与すると、特例事業承継税制の適用を受けることができ贈与税の全額が猶予されます。

2.猶予された贈与税は先代経営者の死亡によって免除されるが相続税として課税
上記の一括贈与後に先代経営者が死亡した場合、事業継続などの一定の要件を満たしていれば贈与税は免除されます。ただし、贈与時点の評価額が相続税の課税価格に算入されて相続税として課税されます。

3.一括贈与分に対応する相続税も全額納税猶予され、後継者の死亡時に免除
上記の一括贈与した非上場株式の評価額は相続税として計算されますが、その評価額に対応する相続税の全額が納税猶予されます。事業継続などの一定の要件を満たし続けていれば、猶予された相続税は後継者の死亡時に免除されます。

4.一定の要件のうち雇用確保要件は実質的に撤廃
従業員については「常時使用する従業員数が 5 年平均で贈与又は相続時等の従業員数の 80%を下回らないこと」とする雇用確保要件があるものの、要件を満たせなくなった場合でも認定経営革新等支援機関の意見が記載されている「雇用確保要件を満たせない理由を記載した書類」を都道府県に提出すれば納税猶予等の取り消しはないものとされます。

4番目の要件が大きなリスクだったため、書類の提出によって納税猶予等の取り消しが無くなったことで制度は活用しやすくなったと思われます。

手続きの流れを説明

特例事業承継税制の適用を受けるには次の要件が必要です。

<経営者(先代経営者)>
①過去に代表者であったこと
②代表者であった時に、同族内で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、 かつその同族内で筆頭株主であったこと
③贈与までに代表権を返上すること

<後継者(特例経営承継受贈者)>
①贈与までに、20 歳以上・役員就任 3 年経過後で代表権を取得
②贈与までに、同族内で合わせて発行済議決権総数の 50%超を保有し、 かつ同族内で筆頭株主であること
③県への認定申請日までに引き続き株式を保有

上記の要件を確認した上で令和 5 年 3 月末までに「特例承継計画」を提出し、令和 9 年末までに後継者へ自社株式を一括贈与します。
後継者は県への認定申請を行ったうえで贈与税の申告をします。贈与税については全額が納税猶予になり、贈与税の申告期限から贈与した経営者の相続時までは、定期的に報告書や届出書の提出をします。 贈与した経営者の相続時に、納税猶予されていた贈与税は全額が免除になります。

代わりに贈与時の自社株式の評価金額を相続財産に加算して相続税を算出した上で、 自社株式に係る相続税のみが納税猶予になります。贈与を受けた後継者の死亡時まで一定の条件で経営を継続することで、相続税の納税猶予は最終的に免除になります。

本税制の活用については、現経営者が退職を検討する年齢に達しており後継者が確定している、相続財産に占める自社株式の評価金額が高く相続税の負担が重い、後継者自身が本人の死亡時まで事業を継続する意思があるなどの場合には、非常に効果の高い事業承継、相続税対策となると考えます。

経営環境の変化によるリスクについて

以前はこの経営環境の変化がリスクとしてこの税制を使うことに二の足を踏む方が多かったです。改正によってそのリスクが緩和されましたので以下記載します。

<贈与開始前>
①特例事業承継税制を検討中で「特例承継計画」の提出前に経営者が亡くなった場合
令和 5 年 3 月末の特例承継計画の提出期限前に相続が発生した場合、例外規定 として、後継者が役員就任 3 年経過等の要件を満たせば、本税制の活用が可能
②「特例承継計画」を提出後、後継者が役員就任 3 年経過する前に経営者が死亡
特例承継計画に後継者として記載されていれば、経営者が 70 歳未満で死亡した 場合に限り本税制の活用が可能(令和 3 年 4 月 1 日以後より適用開始)

<贈与税申告期限後 5 年間(特例経営贈与承継期間)>
①贈与を受けた株式の一部を譲渡した場合や、後継者が会社の代表権を失った場合
事業承継税制の認定取消となり、猶予されている贈与税と利子税の全額を納付

<贈与時申告期限後 5 年間(特例経営贈与承継期間)経過以降>
①贈与を受けた株式の一部を譲渡した場合
譲渡した株式分に対応する贈与税と利子税を納付。残額の納税猶予は引き続き継続
②後継者が会社の代表権を失った場合や、雇用確保要件を下回った場合
事業承継税制の認定取消にはならず、納税猶予は引き続き継続
③会社が解散した場合や、会社の譲渡や合併の場合
相続税の計算は贈与日時点の評価額となるため、贈与時より自社株式の評価額が 下落した場合、相続税が増加するリスクがあります。その際は、「経営環境の変化 を示す一定の要件」(一定の売上高の減少・負債割合・一定の株価下落等)を満せば、減免されます。減免が認められた場合、会社が解散した時にはその時点の相続税評価額で評価、 会社の譲渡又は合併した時には、譲渡又は合併の対価で計算(ただしその時点の相続税評価額の 50%が下限)し、贈与税と利子税を納付

後継者は事業を長期間継続する必要がありますが、特例経営贈与承継期間(贈与税申告期限後 5 年間)を経過すれば、経営環境の変化によるリスクは大幅に軽減されていきます。

本特例を適用する際に最初に作成する「特例承継計画」について

記入例について解説していきます。
下記にあるリンクをご確認ください。

1 枚目のポイントは「3 特例後継者について」です。この項目は 3 名記載できるようになっています。「特例承継計画」の提出時点では特例後継者を 3 名まで記載することができ、実際の贈与の段階で記載している中の 1 名に決定することが可能です。また、記載の 3 名の中から一定の条件の上で、複数名もしくは 3 名とも特例後継者とすることも可能です。逆に特例後継者として記載していない人に事業承継税制を利用して贈与することはできません。

2 枚目では、株式を贈与するまで贈与後 5 年間の経営計画を記載します。記載例にある通り、数値目標を記載する必要はありません。経営を承継するまでの具体的は承継計画を記載します。

別紙の所見は、経営者ではなく「認定経営革新等支援機関」が記載します。2 枚目の経営計画の作成段階から「認定経営革新等支援機関」と打合せの上、作成すると円滑に進められます。

この「特例承継計画」の提出期限は令和 5 年 3 月 31 日となっていますのでご注意ください。

施行規則第 17 条第 2 項の規定による確認申請書 (特例承継計画)

まとめ

以上、特例事業承継税制の概要や注意点について見てきました。
なかなか複雑で文字で読んでも難解かと思います。
もしご支援が必要な場合は、中小企業経営者のご年齢や自社株式の評価金額等を確認しながら適用の検討を一緒に検討いたしますので、気軽にご相談ください。

特例事業承継税制を適用し、要件を満たしながら経営を承継してゆくことで、 自社株式の相続税は最終的に免除となりますが、ご自宅の土地建物や金融資産など事業以外の財産が多額の場合はそちらは相続税率は高いままとなります。この特例承継税制をきっかけに、自社株式以外の相続税対策も進めることもおすすめします。