小規模宅地等の特例を受ける上で大切なこと
家族が亡くなったため相続の手続きをお願いしたいと相談に来られたお客様。相続税の申告期限には間に合いましたが、遺産分割協議にかなりの時間がかかってしまいました。相続人それぞれに抱く感情が原因でした。もめないための対策も含め今回は小規模宅地等の特例について事例を交えてご紹介します。
まずは相続財産の確認と相続税額シミュレーションから
母が亡くなったと相談に来られたのはご長男。
相続人は長男と次男です。
まずはいつものように相続財産の確認から行いました。
相続財産は不動産と預貯金。
不動産は自宅の土地と企業に賃貸している土地の2ヶ所。
相続税のシミュレーションをしたところ、財産の総額は相続税の基礎控除額を超えそうでした。
しかし、自宅の土地について小規模宅地の特例を使えば相続税はかからなくなりそうでした。
そのため財産目録を作成し、それをもとに長男と次男で遺産分割協議をしてもらうことにしました。
今回はこの後小規模宅地等の特例について概要をお伝えし、後半で相続対策の話をいたします。
相続人は長男と次男です。
まずはいつものように相続財産の確認から行いました。
相続財産は不動産と預貯金。
不動産は自宅の土地と企業に賃貸している土地の2ヶ所。
相続税のシミュレーションをしたところ、財産の総額は相続税の基礎控除額を超えそうでした。
しかし、自宅の土地について小規模宅地の特例を使えば相続税はかからなくなりそうでした。
そのため財産目録を作成し、それをもとに長男と次男で遺産分割協議をしてもらうことにしました。
今回はこの後小規模宅地等の特例について概要をお伝えし、後半で相続対策の話をいたします。
小規模宅地等の特例とその適用要件とは?
小規模宅地等の特例とは、相続開始直前において、被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業や居住の用に供されていた宅地は、一定の要件のもと、その宅地の評価額を一定の面積まで減額することができるという特例になります。
今回はその中でも居住の用に供されている宅地の減額「特定居住用宅地」について検討します。
誰でも適用ができるというわけではなく、取得する人によって要件が変わってきます。
以下、ケースを場合わけして見ていきます。
A:配偶者の場合
配偶者の場合は特に何か要件が必要ということはありません。
配偶者が自宅の土地を相続するなら適用可能です。
B:被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族
こちらは同居親族などがその土地を相続した場合となります。
相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していることが条件となります。
同居親族が相続するわけですから、そのまま住み続けることが多いと思います。
その場合は適用可能です。
C:上記以外の相続人が取得した場合
自宅からは出ていた方が当てはまります。
この場合は要件が多くありますがその中でも重要なものは以下のとおりです。
①被相続人に配偶者がいないこと。
②相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと。
③相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと。
④相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。
これらを簡単に表現すると、亡くなった方は配偶者がおらず一人住まいであり、その土地を相続する人は本人や配偶者など近親者の家に居住していないことや、さらに居住している家屋は過去に本人名義になったことがないことが要件となるということになります。
D:被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等
例えば子の自宅に親が同居し一緒に生活をしている場合のその土地について、その子が相続し相続税の申告期限まで居住していれば問題ありません。
以上、簡潔に小規模宅地の特例を説明いたしました。
簡潔に記載したつもりですが、なかなか難しいですよね。
上記以外にも事業用の土地に利用できるものなどもあります。
お客様が相続の相談にこられた時点では細かい情報まで把握していないことが多いので、一つ一つ一緒に確認していきます。とくにケースCの場合は、被相続人の居住していた土地を誰が相続するかにより適用できるかできないかが大きく変わってきます。相続の際は必ずご相談いただければと思います。
今回はその中でも居住の用に供されている宅地の減額「特定居住用宅地」について検討します。
誰でも適用ができるというわけではなく、取得する人によって要件が変わってきます。
以下、ケースを場合わけして見ていきます。
A:配偶者の場合
配偶者の場合は特に何か要件が必要ということはありません。
配偶者が自宅の土地を相続するなら適用可能です。
B:被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族
こちらは同居親族などがその土地を相続した場合となります。
相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していることが条件となります。
同居親族が相続するわけですから、そのまま住み続けることが多いと思います。
その場合は適用可能です。
C:上記以外の相続人が取得した場合
自宅からは出ていた方が当てはまります。
この場合は要件が多くありますがその中でも重要なものは以下のとおりです。
①被相続人に配偶者がいないこと。
②相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと。
③相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと。
④相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。
これらを簡単に表現すると、亡くなった方は配偶者がおらず一人住まいであり、その土地を相続する人は本人や配偶者など近親者の家に居住していないことや、さらに居住している家屋は過去に本人名義になったことがないことが要件となるということになります。
D:被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等
例えば子の自宅に親が同居し一緒に生活をしている場合のその土地について、その子が相続し相続税の申告期限まで居住していれば問題ありません。
以上、簡潔に小規模宅地の特例を説明いたしました。
簡潔に記載したつもりですが、なかなか難しいですよね。
上記以外にも事業用の土地に利用できるものなどもあります。
お客様が相続の相談にこられた時点では細かい情報まで把握していないことが多いので、一つ一つ一緒に確認していきます。とくにケースCの場合は、被相続人の居住していた土地を誰が相続するかにより適用できるかできないかが大きく変わってきます。相続の際は必ずご相談いただければと思います。
小規模宅地等の特例の適用でじつは一番重要なこと
じつは小規模宅地等の特例を適用するにあたり一番重要なことがあります。
それは「その土地について遺産分割協議が成立していること」が条件になるということです。
つまり、実家を誰が相続するのかが決まっていないと、要件を満たした人がいても小規模宅地等の特例を適用することができないのです。
今回の相談について当てはめて見てみましょう。
相談者のお宅は、母、独身の長男、妻と子がいる二男、の3世帯で同居しておりました。
長男、二男のどちらが相続しても小規模宅地等の特例の適用要件には合致します。
そのため、遺産分割協議が成立さえすれば納税なしで相続税の申告は完了することになります。
しかし、一番重要な遺産分割協議が難航しました。
長男の考えと次男の考えが違ったからです。
お互いの言い分は次の通りです。
長男
自分が長男であり、家にかかる費用などはすべて自分の収入から払うので、すべて相続することで良いのではないか。
二男
自宅の土地は自分が相続する。企業に貸している土地は2分の1ずつ相続して収入を分散させれば所得税の負担を軽くできる。
おおかまにこのような内容でした。
そこで、相続税の負担を軽くするという観点からのアドバイスとして次のようなことを伝えました。
長男は独身ですので、今後も独身のままだと想定した場合、長男が亡くなった際の相続人は二男になります。
①今回の相続で長男がすべての財産を取得した場合、今度は長男の相続時に相続税の申告が必要になるかもしれない。
そのため自宅の土地は弟が相続して、長男の財産を少なくしておく方が良いのではないかということ。
②企業に貸している土地については所得税の観点からいくと、一人に集中するより2分の1にしたほうがトータルの所得税は低くなると思われること。
相続税の観点からも2分の1で相続したとしても、長男の財産がそこまで多くはならないことと、いずれ二男に相続されることになるので特に問題はないのではないかということ。
これらを伝えて、遺産分割協議を進めていきました。
それは「その土地について遺産分割協議が成立していること」が条件になるということです。
つまり、実家を誰が相続するのかが決まっていないと、要件を満たした人がいても小規模宅地等の特例を適用することができないのです。
今回の相談について当てはめて見てみましょう。
相談者のお宅は、母、独身の長男、妻と子がいる二男、の3世帯で同居しておりました。
長男、二男のどちらが相続しても小規模宅地等の特例の適用要件には合致します。
そのため、遺産分割協議が成立さえすれば納税なしで相続税の申告は完了することになります。
しかし、一番重要な遺産分割協議が難航しました。
長男の考えと次男の考えが違ったからです。
お互いの言い分は次の通りです。
長男
自分が長男であり、家にかかる費用などはすべて自分の収入から払うので、すべて相続することで良いのではないか。
二男
自宅の土地は自分が相続する。企業に貸している土地は2分の1ずつ相続して収入を分散させれば所得税の負担を軽くできる。
おおかまにこのような内容でした。
そこで、相続税の負担を軽くするという観点からのアドバイスとして次のようなことを伝えました。
長男は独身ですので、今後も独身のままだと想定した場合、長男が亡くなった際の相続人は二男になります。
①今回の相続で長男がすべての財産を取得した場合、今度は長男の相続時に相続税の申告が必要になるかもしれない。
そのため自宅の土地は弟が相続して、長男の財産を少なくしておく方が良いのではないかということ。
②企業に貸している土地については所得税の観点からいくと、一人に集中するより2分の1にしたほうがトータルの所得税は低くなると思われること。
相続税の観点からも2分の1で相続したとしても、長男の財産がそこまで多くはならないことと、いずれ二男に相続されることになるので特に問題はないのではないかということ。
これらを伝えて、遺産分割協議を進めていきました。
感情のもつれが相続では難しい問題に
長男と二男は話を重ねるごとに感情的になっていってしまいました。
なかなか話がまとまらない原因は、今までのお互いに抱えていた想いにあることがわかってきました。
長男は、自分が生まれ育った家なのに二男家族も同居しているため、肩身の狭い思いで生活をしていた。だから長男として相続してもいいだろうという話をされました。
二男からは、長男は独身で自分のしたいことをして過ごし、家のことなども一切しない。
母の面倒も自分たち家族がいつも見ていたという話がありました。
つまり母がいることで長男と二男の生活のバランスが保たれていましたが、その母がいなくなったためお互いの想いがぶつかり始めてしまったようです。
まずは冷静に話ができるようにお互いの言い分について、相手の立場になって考え理解していただくように話をしました。そして一緒により良い第三の案を考えていくことにしました。
その一つの案として、長男と次男がお互いを気にせずに過ごすことのできる環境を作ることを検討してみてはどうかという提案です。
すると次男から、どちらかが家を出るとかではなく自宅をリフォームしてお互いが住みやすい環境にしていこうと前向きな話がありました。
それを受けて長男からは、肩身が狭いと感じて家のことをしてこなかったため、リフォームをすることでこれからは家のことをやっていけるのではないかと話がありました。
お互いの感情を理解し、妥協案ではないより良い第三の案を皆で考えた結果、自宅は次男が相続し、企業に賃貸している土地は2分の1ずつ相続するという結論にたどり着きました。
この遺産分割協議の成立までには3か月の時間を要してしまいましたが、双方が納得できる着地に導くことができました。
なかなか話がまとまらない原因は、今までのお互いに抱えていた想いにあることがわかってきました。
長男は、自分が生まれ育った家なのに二男家族も同居しているため、肩身の狭い思いで生活をしていた。だから長男として相続してもいいだろうという話をされました。
二男からは、長男は独身で自分のしたいことをして過ごし、家のことなども一切しない。
母の面倒も自分たち家族がいつも見ていたという話がありました。
つまり母がいることで長男と二男の生活のバランスが保たれていましたが、その母がいなくなったためお互いの想いがぶつかり始めてしまったようです。
まずは冷静に話ができるようにお互いの言い分について、相手の立場になって考え理解していただくように話をしました。そして一緒により良い第三の案を考えていくことにしました。
その一つの案として、長男と次男がお互いを気にせずに過ごすことのできる環境を作ることを検討してみてはどうかという提案です。
すると次男から、どちらかが家を出るとかではなく自宅をリフォームしてお互いが住みやすい環境にしていこうと前向きな話がありました。
それを受けて長男からは、肩身が狭いと感じて家のことをしてこなかったため、リフォームをすることでこれからは家のことをやっていけるのではないかと話がありました。
お互いの感情を理解し、妥協案ではないより良い第三の案を皆で考えた結果、自宅は次男が相続し、企業に賃貸している土地は2分の1ずつ相続するという結論にたどり着きました。
この遺産分割協議の成立までには3か月の時間を要してしまいましたが、双方が納得できる着地に導くことができました。
生前からの対策をおすすめしています
今回の相談者の家族は1つの家に3世帯が同居しているという環境でしたので、生活の中心にいた母が元気なうちから将来への準備ができていたら遺産分割協議はもっとスムーズに成立していたかもしれません。
時間があればもっと別の案が生まれていたかもしれません。
また、母の想いとして遺言があればさらに良かったかもしれません。
もちろん、今回の分割方法が一番良かったかもしれません。
このように何が正解かを決めるのは難しいのですが、潜在的な問題を顕在化させ、解決方法を考える時間にも余裕が持てますので、相続については早い段階から対策をすることをいつも推奨しています。
ちょっとした疑問でも全然問題ありません。
もし少しでも気になることがありましたらぜひ早めにご相談ください。
皆が幸せで納得がいく相続のことを一緒に考えるお手伝いをいたします。
時間があればもっと別の案が生まれていたかもしれません。
また、母の想いとして遺言があればさらに良かったかもしれません。
もちろん、今回の分割方法が一番良かったかもしれません。
このように何が正解かを決めるのは難しいのですが、潜在的な問題を顕在化させ、解決方法を考える時間にも余裕が持てますので、相続については早い段階から対策をすることをいつも推奨しています。
ちょっとした疑問でも全然問題ありません。
もし少しでも気になることがありましたらぜひ早めにご相談ください。
皆が幸せで納得がいく相続のことを一緒に考えるお手伝いをいたします。