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相続対策時から綿密なコミュニケーションを

ご自身で早めの相続対策を行っていたので相続税はかからずに済みましたが、相続人間でもめる事態となってしまった方がいらっしゃいました。原因は家族間のコミュニケーション不足にありました。どの時点で、どのようにすればよかったのか、今回は相続対策をする場合の注意点をお伝えします。

話合いまではスムーズでした

実家の母が亡くなったので、相続のことについて教えて欲しいと相談がありました。
相続人は長男、二男、長女、二女の4人です。

相続人全員に事務所に来ていただき、必要書類の説明を行い、財産の確認ができる書類を揃えていただくことになりました。この時相続人の兄弟姉妹4人は仲の良い雰囲気でした。

その後書類を受け取り、こちらで財産目録を作成いたしました。
不動産が5か所。
相続対策で建築した集合住宅が2か所。貸地が2か所。そして自宅という内容です。

他に預貯金と有価証券が少しありました。
集合住宅の建築のための借入金もあります。

相続税の計算をしたところ、基礎控除内におさまっており相続税はかからないことがわかりました。このあと遺産分割協議をして相続の手続きは終了となります。

相続人全員に財産の説明をしました。

実家で長男が母の面倒を見ながら相続対策を行っており、他の相続人も長男に任せていたので、集合住宅などは長男が相続するとのことでした。

貸地については長男と二男で相談して決めることとなり、長女と二女は預貯金を一部相続するという話になりました。

方向性が決まったので、次は遺産分割協議書に押印をするというところまでいきました。

この時も相続人の兄弟姉妹4人は談笑をしておりました。

しかし遺産分割協議書に押印するため皆で集まろうという直前に、長男宅に一通の封書が届きました。それは弁護士からのものでした。

二女より、法定相続分を主張する書面が届いたのです。

家族でも人の気持ちはわからない

長男よりすぐに当事務所に連絡が入りました。
長男は弁護士を立てず相手の弁護士と話し合いをすることになりました。

二女の言い分は次の通りです。

①長男が勝手に相続対策を進めた
②相続対策をした土地を相続したかった
③相続対策をしたせいで預貯金が減少しているのではないか
④同居しているのをいいことに母の預貯金を私的に使っているのではないか

①と②について
長男としては相続税を考えると、場所と地形がよく、何をするにも問題のない土地が遊休地のままでいるより、活用して収入を得ながら相続対策をしたいと考えていたようです。そのため相続対策として集合住宅の建築をされていました。亡くなった母もその考えには賛同しており、決して長男だけで話をすすめたわけではありません。当時、二女から相続したいという話はなく、今回初めて聞いたとのことでした。

③について
預貯金が減少しているわけではありません。借入金を返済しても、集合住宅からの収入は残っています。借金があるという状況でそのように感じられたのかもしれません。

④について
長男が母の預貯金を私的に使っているのではないか。その分を戻して相続財産の額と考えたいとのことでした。特にATMで現金出金したことを細かく確認したいとの要望がありました。

こちらについては当事務所が作成した資料をもとに回答いたしました。
当事務所では、相続を申告する際に預貯金の通帳の流れをすべて日付ごとに整理した資料を作成いたします。

今回は不動産が多かったので、相続税の申告も見据えて作成しておりました。そのため、通帳の資金移動の確認やATMで出金したものについても細かく確認することができ、母の預貯金を減少させたという事実はないことを証明できました。

弁護士とのやり取りを何回か行い、最終的に貸地の1つが法定相続分相当の評価額の土地であったので、そちらを相続することになりました。

長男はこんなことになるなんて、と本当に驚かれていました。今まで二女から相続について反対する話などもなく、兄弟姉妹が仲良く談笑する関係であったはずでしたので。

法定相続人ではない相続人の配偶者が後ろで助言をしている、なんてことも聞いたことがあります。実際今回がそうだったかはわかりませんが、長男にとっては今回そう思ってしまうほどの衝撃だったようです。

しておくべきことは何だったのか

今回二女の言い分である①と②は、勝手に相続対策の話を進め、相続したいと思っている土地も対策に利用されてしまったということでした。

では、どのようにすればこのような言い分を回避することができたでしょうか。

勝手に相続対策の話をすすめた=相談がなかったということだったのだと思います。
相続対策を検討している時点で二女に相談していたら結果は違ったかもしれません。

相談して二女が反対するのであれば、別の案を計画することもでき、別の案で二女が了承したならばもめることはなかったでしょう。

二女が反対しており、それでも相続対策を実行するならば、将来もめるかもしれないことを想定し、遺言の作成を検討することができたかもしれません。

仮に今回遺言があった場合、二女は少しの預貯金を相続することになっていたでしょう。その額が遺留分に満たない場合は遺留分侵害額請求をすることになります。こちらは民法で保証されている権利です。遺留分の割合は法定相続分の2分の1となります。

財産を少しの預貯金のみの相続だけということにはできませんが、二女が相続する財産額を抑えることができます。亡くなった人の想いをかなえ、財産の過度な分散を防ぐことができます。

このブログの中では、何回も遺言を作成しましょうと記載しております。それは財産を残す人が亡くなった後に自分の想いを伝える最後の手段だからです。仮に遺言通りに分割されない場合でも、もめ事のリスクは最小限に減らすことができます。

このように相続対策の検討の時点で相続人間でしっかりとコミュニケーションを取っておけば、対策の選択肢も広がり、もめる相続を回避することにも繋がっていきます。

たとえ仲の良い家族であってもしっかり対策を

いくら仲の良い家族であってもしっかりと話し合いをしなければ、本当の思いのところまではわからないものです。

また、財産を残す人の考えや気持ちを相続人全員と完全に一致させるのは非常に難しいことです。それができないため、揉め事が起こり、調停などに発展するのです。

うちは揉めないから大丈夫ということを言う方がいらっしゃいますが、コミュニケーションを確実に取っておくことはとても重要です。相続のことに向き合い、相続人が困ることのないように準備していきましょう。

当事務所では今回ご紹介したような事態が起こらないように、じっくりとコミュニケーションが取れる時間に余裕を持った早めの相続対策をおすすめしております。少しでも気になることがございましたら、どうぞ気軽にご相談ください。