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相続対策として不動産と保険を有効活用できた事例

木村美都子税理士事務所主催の相続セミナーに参加していただいたのがきっかけで、相続対策を検討していくことになったお客様。不動産が多く、どのようにしていけばいいのかわからずに困っておりました。数年後相続が発生しましたが、一緒に相続対策をしていたこともあり問題なく手続きを終えることができたという事例になります。

財産の確認から相続対策のご提案

弊社主催の相続セミナーに参加されたお客様。
お母様が所有する不動産が多くあるため、いざ相続となった時にどうしたらいいのかわからないと困っており相談にみえました。

そこでまずはお母様の相続シミュレーションを行うことにしました。

お母様の相続人は長女(相談者)、長女の息子(養子縁組)の2人でした。

最初に不動産の確認から行いました。
不動産は、自宅、借家が数棟、貸駐車場で、合計5か所ありました。
自宅はかなり広く、隣接に畑があります。

金融資産は数百万円。相続シミュレーションを行いましたが、相続税が納税できるだけのキャッシュはありませんでした。そのため相続対策を実行していくことになりました。

長女の息子も孫養子で相続人です。将来財産をどのようにしていくか相談しながら対策を検討しました。

自宅と借家についてはこのままにしておくとのこと。そのため、貸駐車場として利用している3か所について話をしました。貸駐車場といってもアスファルト舗装はしておらず青空駐車場です。

不動産の有効活用

貸駐車場のうちの1か所はアパートを建築する相続対策を検討しました。
親族にハウスメーカーに勤務している方がいるようでしたので、その方に建築計画を作成してもらいました。

このアパート建築を実行することにより相続税は減少します。不動産が相続対策に用いられるのは、不動産の建築にかかる費用と、建築後のアパートの相続税評価額との間に差が生まれ評価額が下がるからです。建築後のアパートの相続税評価額は建築にかかる費用よりかなり低くなり、また貸家という評価になるため通常の7割の評価額になるのです。

アパートの収支も損益も計画上問題ないと長男の息子さんは判断され、アパートを建築し相続税を減少させ、土地を将来に残していくことを決断されました。

この相続税の減額により、手元の金融資産で納税ができるようになりました。

その後2か所の貸駐車場についても検討をしました。貸駐車場と言っても何台も駐車されているわけではなく、数台しか利用されていない土地でした。

そのうち1か所は長女の息子が家を建てるために残しておきたいという意向がありました。

もう1か所については、相続対策でアパートを建築するには狭い土地でした。
その周辺が分譲地として開発され、すべて新築が建っておりましたので、それならばまだ需要があるかもしれないため売却の検討も視野に入れていただきました。

売却をすることで不動産が金融資産になり納税資金として準備することも可能になります。

検討の結果、必要な土地以外は売却していくという方向に決まりました。もちろんすぐに売却できるとは限りませんので、売却の相談については早めに動いていただくようにお願いをしました。

売却後の資金で相続対策

不動産の売却について、その周辺の土地を開発した業者に売却の相談をすることができました。
ただし売却金額はかなり低いものでした。そのため別の業者にも相談をしてみることで動いてみました。

同時に親族が勤務するハウスメーカーとアパート建築の契約を結び、そちらは無事着工と完成を迎えることができました。
また、長女の息子も自宅を新築する運びとなりました。

翌年、貸駐車場の土地の売却については別の業者と良い形で話がまとまりました。無事売却でき資金化することができました。

この段階で相続税の納税については完全に心配が無くなり少し資金の余裕も出ました。

そのため、その売却代金の一部を一時払終身保険にし、相続の際、死亡保険金の非課税限度額を適用できる相続対策も実施しました。

死亡保険金の非課税限度額は 
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
となり、相続税の財産の計算に入れません。

そのため現預金に余裕があり、まだ死亡保険金額が非課税限度額までに達していないのであれば、相続税の減少の効果が出ますのでお勧めしております。

相続申告でも注意が

数年後、お母様が亡くなりました。

相続税の計算を行うと、当初のシミュレーション通り納税資金も確保できており、無事納税と申告を済ませることができました。相続対策から相続申告まで問題なく終わったことに、長女と長女の息子はとても満足してくださいました。

相続税の申告書を作成している期間に1つ長女から話がありました。

今まで母が存命のうちはできなかったが、じつは自宅が古く、敷地は広すぎるので母が亡くなったことで自分は借家に移動し自宅も売却していきたいとの話がありました。

長女は母が亡くなった後は一人住まいになります。相続対策で財産を整理してきましたが、自宅は長女にとっては悩みでもあったようです。

売却することについては全然問題なかったのですが、相続の申告に際して1つ気を付けていただく点がありました。

自宅の土地は、小規模宅地の特例の「特定居住用宅地」を使い相続税の申告をする予定でしたので、その適用要件の一つの「申告まで引き続き居住していること」を充足してもらう必要がありました。そのため、申告期限までは住んでいただき、申告が終わりましたら売却してもらうように話をしました。

自宅の売却については以前貸駐車場を売却した業者に改めて依頼をしました。

生前から余裕をもって相談を

その後、自宅も無事売却が済みました。

お母様の相続対策から相続税の申告、さらに自宅まで整理することができ、相続人も安心されていました。

また、自分たちでは何をどうしてよいかわからなかったが、一つ一つ筋道をつけて相続対策を行うことができて安心しましたと仰ってくれました。

先祖から引き継いできた財産は減少してしまいましたが、次世代を担う長女とその息子の考え方は、何も利用しない土地であれば売却するほうがよいという考えでした。

不動産をたくさん所有している方は、相続税の納税資金を捻出するのが難しくなることがあります。不動産を有効活用でき十分な収入と貯蓄、相続対策ができていれば問題ありませんが、そういう方ばかりではありません。不動産が有効活用できないのであれば売却するということも考える必要が出てきます。


今回は相談当初から一つ一つ対策を実行することができましたが、相談されるタイミングによっては相続対策するだけの時間がなかったという結果になることもあります。

相続対策の第一歩は早めに専門家に相談をすることだと思っております。
私たちは相談者の意向を最優先にし、その上でできる相続対策を一緒に考えていきますので、何か気になっていることがありましたらどうぞ気軽にご相談ください。