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相続人がしっかりと話し合うことで円満に相続した事例

父が亡くなったと相談に来られたお客様。相続のことはまったくわからないので、全てお任せしたいとの話がありました。相続人の仲は良好で、誰が何を相続するかについてもしっかり今後のことを考えて決めることができました。今回は相続人全員が満足する相続となった事例を紹介します。

まずは遺産分割のために現況の把握から

相談に来られた際、相続のことは何をしていいのか全くわからないとのことでしたので、手続きの流れや必要書類の説明を一つ一つ丁寧に行いました。

そして、まずは財産の把握から行いました。

不動産は自宅とアパートを1棟お持ちでした。
他に株式と現金預金がありました。

概算で計算すると相続税はかかる見込みでしたが、金融資産が多くありましたので納税は問題無さそうでした。そうなると、誰が何を相続するか、ということが重要になってきます。

誰が何を相続するか検討するにあたり相続人の現況は重要です。

亡くなった父は開業医で、自宅に診療所が併設されていました。
相続人は長男と長女と二男の三人です。

相談にこられたのは長女で、自宅で父の手伝いをしておりました。
長男は勤務医で県外に住んでいます。
長男、長女ともに独身です。

二男は結婚をして県外で仕事をしています。
二男から、私は何も相続をしませんので長男と長女で考えてもらえればいいです、との話がありました。

まずアパート1棟をどうするかについて検討しました。

長男は勤務医で収入もあり、アパートを相続しても管理も難しく、収入を得ても所得税の税率が高いため長女が相続したほうがよいとの考えでした。

長女は父の手伝いだったため現在は収入がありません。
そのためアパートの収入を得ても、長男ほど所得税の税率が高くないため有利です。
アパートの相続についてはまったく異論なく長女が取得することに決まりました。

自宅を誰が相続するかは重要な問題

続いて、自宅の相続をどうするかを検討していただきました。
この自宅に関しては3点ほど検討しなければならない点がありました。

1点目
父と生計を一にしていたのは長女でした。
そのため、長女が土地と建物を相続するのであれば、相続税の特例のうち小規模宅地等の特例の特定居住用宅地を利用することができます。
その結果、相続税額を減額することができます。

2点目
長男は現在勤務医ですが、実家の診療所はそのままになっているため、実家に戻り開業することも可能な状態です。話を伺うと実家に戻りいつかはそこで亡くなった父のように開業したいという気持ちがあるようでした。
そうであるならば土地と建物は長男が相続しておくのが良いという話が出ました。

3点目
長男と長女とも独身であるため、二人が亡くなった際の相続のことを検討しました。
このまま二人が独身の場合、どちらが亡くなっても相続人は兄弟姉妹となります。
二男は、長男と長女の相続についても何も相続しないという考え方のため、長男長女のお互いが相続することになりそうです。

ただ今後、長男、長女が結婚して子どもができた場合相続人は家族になります。
そうなると事情は少し複雑になります。
どういうことが起こりえるか、色々なことを想定してみました。

悩んで出した結論は

上記のことを踏まえて最終的に、自宅は長男が相続するという結論になりました。

いずれ開業することを思うと、長女より長男が所有しているほうが良いという考えでした。
自宅の名義は長男になりますが、長女は今後も自宅に住み続けることになります。
それについてはお互い合意していました。

結婚して家族ができたときのことは、考え出すと複雑になりすぎるので、現況を優先に考えることにしました。

今回のように自宅を長男が相続した場合、相続税の小規模宅地の特例の適用はどうなるのでしょうか。長男は亡くなった父と生計も別で一人暮らしをしています。

亡くなった父は長女と生計を一にしていたので、「特定居住用宅地」の特例を適用できるのは長女が相続した場合に限られてしまいます。そのため長男が自宅を相続しても特定居住用宅地を適用することができません。

当然、特定居住用宅地の適用の可否で相続税額も違ってきます。
その点についてはしっかり説明いたしました。

ただ開業の際に自己所有のほうが何をするにしてもスムーズにいくだろうという見立てがありました。

そして亡くなった父が、子どもたちが困らないようにと相続税を納税できる預貯金を残してくれたのだから、納税が少し高くなっても残された預貯金を使わせてもらうこととして、自分たちが考えた相続でいこうという結論に至りました。

今回の小規模宅地の特例について、自宅の「特定居住用家屋」は適用できませんが、アパートがあるため、そのアパートの土地について「貸付事業用宅地等」は適用することができます。

こちらは相続開始の直前において被相続人等の事業(今回はアパートの不動産貸付業)の用に供されていた宅地等について、200㎡まで50%の評価減が可能です。特定居住用宅地ほどの減額はありませんが、少し税額を軽減することができます。

遺産分割は相続人の関係性に左右されます

今回、相続のことはわからないから全てお任せしますとのご相談でしたが、遺産分割の場面ではこちらの話を理解しながらしっかりと決断ができる相続人の皆様でした。

それは相続人の仲が良く、じっくり話し合える関係性であったためだと感じます。

以前のブログでもお伝えしておりますが、相続税の申告期限は10か月となっております。
その中で財産の把握から遺産分割協議の成立まで整うことが一番望ましいです。

数字で見ると10ヶ月は長いと感じるかもしれませんが、実際はあっという間に過ぎてしまいます。今回のように相続人が話し合える環境であれば良いのですが、相続人のうち誰か一人が多忙で話ができないという状況ですとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

10ヶ月の間に相続人全員が満足できる相続を完了することは意外と難しいことだったりします。
満足のできる相続のためにも相続が起こる前の早めの段階からの準備がとても大切になってきます。

まずは家族全員のために財産と相続税の把握をしましょう。
家庭により相続の仕方は異なりますので、どのような課題があるかも考えてみましょう。

遺言が必要な家庭は遺言の作成を検討してみてください。
そうでない家庭も亡くなった後に相続人が困らないように、相続の手続きがスムーズにいくように、遺言の作成を検討しても良いかもしれません。

事前に考えなければならないこと、そしてできることはたくさんあります。
繰り返しになりますが、相続は相続が起こる前に考えることがとても重要です。

とは言え、相続のことはわからないことがほとんどだと思います。
弊社では相続のことを一緒に考えるサポートもいたしますので、どうぞ気軽にご相談ください。