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代襲相続人がいる場合の相続事例

相続セミナーに参加されていたお客様から、母が亡くなったので相続をお願いしたいと連絡がありました。お話を伺ってみると、先に亡くなった兄がおりその代襲相続人がいるとのことでした。その代襲相続人とは相続についての話し合いができていないのでどうなるのかと心配されていました。

まずは相続人と財産の確認から

いつものようにまずは相続人の確認から行いました。

亡くなった母には子が4人いらっしゃいました。
長男、長女、次女、三女の4人です。
長男がすでに亡くなっており、長男の子の長男と長女が代襲相続人(孫にあたる)となるため相続人の数は合計5人です。

一方、財産は不動産、預貯金の合計で、相続税が発生しそうな状況でした。

不動産については、自宅の土地と建物、自宅近くのアパートの土地と建物、少し離れたところにあるアパートの土地と建物です。現金預金も数千万円ほどありました。相続税の納税資金はありますが、遺産分割の状況によってはどうなるかわからない状況でした。

母の想いは伝わっていたが、遺言は無し

財産の確認をしていくなかで相続人の三姉妹から、生前に母が相続人全員の前で遺言の内容を話したことがあるという話がありました。

自宅と自宅近くのアパートは家を継ぐ長男に相続させ、三姉妹には少し離れたところにあるアパートを相続させる。預貯金は相続税を納税する必要があればそこから納税し、残った預貯金を均等に分けなさいという内容だったそうです。

肝心の遺言書はありますかと確認したところ、それは作ってないとの返事がありました。
話した当時は長男も生きており、兄弟姉妹全員で納得していたとこのことです。

しかし、どれだけ全員の前で話をしても、遺言書がなければそれには法的な効果は全くありません。現在はその長男も亡くなっており、母の話通り相続が進められるかまったくわからない状況でした。

その後財産目録を作成し、相続人全員で話し合いをする機会を設けていただくことになりましたが、代襲相続人の2人はまだ若いため、代わりに亡くなった長男の妻が話を聞くことになりました。亡くなった長男の妻は当然相続人ではないので本来は代襲相続人に聞いてもらいたいところです。

しかし話を進めるために、今回は亡くなった長男の妻と三姉妹で話し合いをしてもらうことになりました。

相続人が変われば、意思も変わる

まず母が遺言について過去に話をしていたことを亡くなった長男の妻は聞いているかの確認したところ、聞いていないとのことでした。

そのため内容を説明し、三姉妹からはその分け方で良いと思っていることを話しました。

しかし長男の妻は違う考えでした。
自宅と自宅近くのアパートについては相続することを了承しましたが、預貯金については均等ではなく、長男の子たちに多く相続させたいと話をされました。

今後の自宅やアパートに係る修繕費などを多めにもらいたい。自宅を相続することについても、現在住んでいるから相続するのであって、本当ならもっと小さい家に引っ越したいとも話をされました。

そのため分割協議は後日改めて行うことになりました。

冷静な話し合いが大切

そうなると、ここからは感情の問題になっていきます。

三姉妹から話を聞くと、長男の妻は母の面倒をいっさい見なかった。
食事は三姉妹が母を招き、交代で母と過ごしていたとのこと。

このことが一番大きな問題になっている様子でした。
そのため、相続したくもない自宅を相続するというような言い方も気になるようでした。

そうであるならば、自宅は三姉妹で相続した後売却しその現金を相続させるから、自宅から出て行ってもらうという話まで出てきました。

感情としては理解できますが、冷静に話をしないと分割協議が整いません。
そのため、母の面倒を見ていたことを話したうえで、現預金を均等に相続しようともう一度話をしてみることになりました。

長男の妻とも話ができました。
三姉妹同様に冷静に話をしないと分割協議が整わず、相続人である子どもが大変になってしまうことをアドバイスしました。子どもが大変なことにならないようにという想い、少しでも相続する預貯金が多ければという想いで長男の妻は話したようです。

改めて遺産分割協議を行いました。
三姉妹は今までの思いを長男の妻に伝えました。
長男の妻も、母の面倒を見ていないことについてはその通りであることから何も言えませんでした。とはいえ、三姉妹からは長男の家族に自宅を維持管理してもらうことについては感謝していると伝えて冷静に話をすることができました。

その結果、当初の母の遺言の通りに遺産分割することが決定しました。

土地の共有で将来起こること

三姉妹が相続するアパートについて、母は生前に3人に相続できるよう建物は3棟用意してありました。そのため各々1棟ずつ相続することになります。

ただし土地については家屋に対応して分筆されておらず1筆の上に3棟が建築されています。
この状態ですと、三姉妹で土地を共有しているときは意思疎通もはかれるため問題はありませんが、その配偶者や子どもや孫の代まで相続されていくと、関係性が薄くなり何かと面倒になる可能性が出てきます。

相続税の申告までに各棟に土地を分筆できれば、その土地を各々が相続することができ、その分筆した状態で申告もできます。そのため土地家屋調査士に手続きをお願いしました。

今回はその提案を行い無事申告までに分筆が終わり、三姉妹のアパートの土地はそれぞれに紐づくことになりました。

生前対策の重要性

もしお母様が生前に相談にこられていれば、自分の想いを遺言に記すことができ、三姉妹のアパートの土地については事前に分筆し遺言にそれぞれ相続することも記すことができたと思います。

そうすることにより、相続人が嫌な思いをしたり、不必要な話し合いをせず相続手続きを行うことができます。

今回は相続人の想いについて話をすることができ、遺産分割協議もまとまったので結果的には良かったと思います。ですが、感情のもつれから遺産分割協議がまとまらないということも現実にはあります。

相続人が被相続人の子と孫(代襲相続人など)の場合は年齢や立場が違うからです。世代が違うと考え方も違います。

相続は想定外のことがよく起こります。
その想定外のことは亡くなった被相続人は知らずに、残った相続人が苦労することになります。
相続人が誰も困ることがないように遺言を作成することはとても有効です。

当事務所では、まずは現状を把握する産目録の作成のお手伝い、その財産目録を利用した相続税シミュレーションの作成はもちろん、司法書士と連携した遺言の作成もお手伝いすることができます。

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