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家族経営の会社をお持ちの経営者はこのような相続対策も必要に

家族経営の会社社長より自分が亡くなった時の相続税が気になると相談がありました。話をうかがうと、株式は家族が分散して保有、個人の土地上に法人の建物がある状態で、これらの相続対策が必要となりました。さらに、家族経営だからこその相続対策の必要性もでてきました。今回は家族経営の会社経営者にご一読いただきたい内容となっています。

法人の相続対策(株主)

相談者(以下社長)の家族構成は、妻、長女、長男で、長女と長男には子どもがいます。

財産の確認をすると、不動産、預貯金、家族経営の法人(株式)をお持ちでした。
その法人所有の不動産もあります。

結果、相続税は発生する見込みでした。

財産の確認をしている中で、整理したほうが良いであろうということがいくつかありました。
そのため相続対策を実施していくことにしました。

まずは法人の相続対策を行いました。
株主構成を確認したところ、妻、長女、長女の子供たち、長男、長男の子供たち、と親族全員で株を所有している状況でした。過去に相続対策として生前贈与を行ったとのことでした。

社長にいずれこの法人を誰に継いでもらう予定なのかうかがうと、長男に引き継いでほしい、長男もそのつもりでいるとのことでした。長男は現在会社員ですが、法人を継ぐ意思があるようです。

そこで最初に株主構成についてお話をしました。
親族が株主でも今のところは問題ありません。

しかし、子、孫、ひ孫の代に株が相続されていった場合、株式が経営者以外に分散されていってしまうリスクが残ります。そのことはすなわち法人の経営にあまり興味がない株主が存在するという状況も生まれることになり、会社経営がしにくくなる可能性も出てきてしまうということに繋がりかねません。

また法人と関係性が薄いため株を買い取ってほしいと言われることもあるかもしれません。

相続対策のために株式を贈与した結果株式が分散してしまい、社長以降の世代に株式の問題が残ることになりかねませんでした。

そのため、長女の家族に分散している株式を長男の家族に贈与をしてまとめていくことにしました。長男の子にも長男がいます。将来どうなるかはわかりませんが、長男とその子の長男へ贈与を実行してくことで法人を継いでいくであろう人に株式を集中していく流れをつくりました。

法人の相続対策(不動産)

続いて不動産の相続対策を行いました。

社長が所有している不動産は、自宅の土地と貸駐車場に利用している土地がありました。
その他に2か所土地を所有しており、その土地に法人が建物を建築し、法人が不動産賃貸業をしています。

自宅は妻に、貸駐車場は長男に相続させ、法人が利用している土地も法人を継ぐ長男が相続すればいいと話されていました。

ただそうなると土地や株を相続する長男ばかりが相続する割合が多くなります。
長女の相続する分はどうなるのでしょうか。

不動産以外ですと預貯金となります。
法人が利用している土地を長女に相続させることも検討しました。

しかし株式と同様に、次の代、その次の代へと相続された際に、法人とは関係のない人が所有するということが起きてきます。これは好ましくありません。

そのため法人が利用している土地については、先に法人に買い取ってもうことで相続財産から切り離すことにしました。法人がすぐに買い取れるだけの内部留保はありませんでしたので、数年後に売買を実行する計画しました。売買が実行できれば、その資金でまた別の相続対策ができるからです。

その後、長女の家族が所有していた株式は長男とその子に数年かけて贈与を行いました。
また、土地についても数年後に売買を実行することができました。

こうすることにより、法人と個人の所有を整理することができたので、法人については株式を誰に相続するのかを考えるだけが残ることになりました。

その後の対策と遺産分割

次に土地の売買資金により増えた預貯金について対策を行いました。

資金に余裕がある方にはいつも相続対策で提案している生命保険の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)の話をしました。そうしたところ、受取人を長女にして契約したいとの話になりました。

ほとんどを長男が相続することになり、長女にはあまり相続させることができないのは不公平という思いがあったようです。

こうして株式の贈与と不動産の整理と生命保険の加入といった相続対策を実行していきました。

遺言についても作成の提案をしましたが、社長は財産の内容から特にもめないと思っており、遺言は書かないとおっしゃいました。

数年後社長は亡くなり、相続の手続きを行うこととなりました。
そして遺産分割協議になりました。

妻については住んでいる自宅を相続することになりました。
いずれこの自宅は長男に相続してもらいたいと話があったようです。

長男は社長が保有していた法人の株式と貸駐車場に利用している土地を相続することとなりました。

長女は生命保険以外に、生活のために数百万円を預貯金から相続することとなりました。

遺産分割は問題なくスムーズにいきました。
株式も長男に集めることができましたし、次の代にしっかり承継できます。

家族経営の法人で注意したい点

相続は問題なく終わりましたが、家族経営の法人で一点注意したい点がありますので補足します。

それは家族従業員と給与の問題です。

家族の方が従業員として働いていて給与をもらっている法人は多いと思います。
家族経営ですからそれが一般的です。

ただ、経営者が次世代になった場合もなんら問題なくこの形態を維持できるかと言うとそうでもないケースがけっこうあったります。

今回のケースで当てはめてみると、社長が存命のときは問題ありませんでした。

長男が相続し社長になったら、どうでしょうか。
長男の家族で法人を経営していくことも検討されるのではないでしょうか。

そうなると長女や長女の家族が働いている場合、雇用が打ち切られるケースもあり得ます。
長女は収入が途絶えることになりますし、長男としては自分の家族にバトンタッチしてもらいたいと思ったとしても言い出しにくいというケースも出てきます。

こうならないためにも、家族経営の場合は社長が存命のうちに自分が亡くなったら法人をどうするか、後継者はどうしていきたいのか等を予め家族で話し合っておく必要があると考えています。

家族経営ですが、株式や不動産と同様、世代が進めば法人を経営する家族も変化しますし、経営者が変われば経営方針も当然に変わります。

この点については十分に注意が必要で、だからこそ先代が存命中に確認をし、必要があれば更なる対策をしておく必要もあると考えます。

まとめ

相続は次の代、その次の代へと財産が承継されていきます。
家族皆で財産を相続していくものですが、代を重ねていくと分散していくことになります。

そのため何を誰に相続させていくかを決定していくことは非常に重要なこととなります。

法人は次の世代に社長がバトンタッチされれば、その人を中心に経営されていきます。
相続した後、家族の間でわだかまりができないように、家族経営の法人の場合は特に皆で将来のことを話しておくことが大切になってきます。

木村美都子税理士事務所では生前からの相続対策が重要と考えております。
上記のような法人の課題についても一緒にに解決していきます。

毎回このブログコーナーで記載していますが、実際に相続が起こってからではできる対策は少ないのが現実です。ですので、相続のことが少しでも気になりましたらそのタイミングでご相談いただきたいと考えています。

相続税のシミュレーションや相続対策について一緒に検討いたします。
気軽にご相談ください。