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代襲相続人がいる相続における遺言の重要性

代襲相続人がいる相続の場合、遺言の存在が非常に重要になります。遺言があった場合となかった場合とでどのような違いが出るのか、実際の事例を参考にご紹介します。

相続人・相続財産の確認と遺言に託された想い

祖母が亡くなったと相談に来られたのは代襲相続人であるお孫さんでした。

孫の父親は長男で、先に亡くなっています。
父親の兄弟は弟が三人いました。

相続人は、孫と叔父三人となります。
そして遺言があるとのことでした。

祖母の財産は不動産と金融資産がありました。
相続税が発生する状況です。

不動産は、叔父三人がそれぞれ住んでいる家の土地が祖母名義でした。
孫が住んでいる家の土地も祖母名義です。
祖母名義の土地の上に、それぞれ自分で家を建てている状況でした。
その他に賃貸ビルがあり、そのビルの土地と建物が財産です。

遺言には次のように書かれていました。
・相続人それぞれが使用している自宅の土地はそれぞれが相続すること
・賃貸ビルや金融資産は代襲相続人の孫が相続すること

祖母は長男の子である孫に家を守ってもらうために遺言を作ったようです。

遺言があったとしても主張はある

遺言通りの相続手続きと申告に向けて進めているところで叔父たちから話があったようです。

その内容は、祖母より先に祖父が亡くなった際、祖父の財産も長男だからという理由で孫の父がほとんど相続した。今回の祖母の相続も財産のほとんどを相続することになる。自分たちにも少し金融資産を相続させてほしいとのことでした。

前回の相続のことを孫は当事者ではないため知りません。
家族全員で納得して遺産分割協議書を作成したはずでした。

孫が相続する賃貸ビルなどの管理や運営、相続税の納税のことを考えると叔父たちに相続する金融資産の余裕はありませんでした。そのため遺言通りで相続したい旨を伝えたところ、叔父たちは遺留分の侵害額請求をするとなりました。

侵害額請求が来ることを前提で遺言通りで相続税の申告を行い、いつ遺留分侵害額請求をされるのかと待っておりましたが、最終的には請求されることなく終わりました。叔父たちにも何か考えがあったのだと思います。

遺言の利点

今回、遺言がなければどうなっていたかを孫と一緒に話をしました。

まず相続をすることができる割合が、遺留分ではなく法定相続分となります。
相続人が4名なので、叔父三人はそれぞれ4分の1相続することができます。

自宅の土地の価値が法定相続分に満たない場合は、それ以外の金融資産なども相続したいと主張することができます。

全員が納得して遺産分割協議書を作成し財産を相続しない限り、相続が完了しません。

相続財産の預貯金に余裕があれば、自宅の土地と預貯金で取得財産が4分の1になるように相続してもらうことは可能かもしれません。

金融資産に余裕がない場合は、例えば賃貸ビルの土地と建物を売却し、その売却代金を相続人で分ける必要性が出てきます。売却となると財産を守ってもらいたいという祖母の気持ちも叶えられなくなります。売却したくない場合は、賃貸ビルの土地と建物を相続し、そのかわりに自身の金融資産を代償財産として渡す必要があります。

遺言の利点は、自分の想いを残せることにあります。
また遺言に不服があっても、相続人は遺留分までしか主張できないというところにも利点があります。

遺言がなければ法定相続分を主張することができます。自分が家を守るために多く相続しても、他の相続人に法定相続分を主張されることにより、財産が分散してしまい、家を守れなくなる可能性が高まります。

遺言があれば、相続できる権利を主張されても遺留分までで、法定相続分の2分の1という割合のため、財産の分散リスクは軽減されます。

代襲相続の場合によくみられるケース

代襲相続の場合は今までの経験上よく問題が起こります。
代襲相続人がまだ若い場合は代襲相続人の子どもとその親が一緒に相続を考えるケースが多いです。

その親と他の相続人の関係が良好でないと、遺産分割協議がスムーズに成立しないのです。

親族間で、もめ事を起こしたくないということから、言われるがままに遺産分割協議が行われることもあります。できればしっかり話し合いをし、皆で納得できる遺産分割にしたいものです。

おじやおばの立場としては自分の父や母の相続であり、亡くなった兄弟の子に相続させる前に自分たちがしっかり相続をして守っていこうと考えることも自然です。

また、甥や姪と会って話をする機会が少ないため戸惑ってしまうことや、その親と話をしにくいということもあります。

一緒に生活した兄弟姉妹でさえ、相続になると今までの兄弟間の気持ちが影響し、スムーズにいかなかったり、話し合いが長引いたり、弁護士が介入したりと意思疎通が簡単ではなかったりします。それが世代の違う者と話し合うということでさらに意思疎通が難しくなることは容易に想像できます。

遺言の効果を再認識

遺言を作成しても、遺留分の侵害額請求ができますから、すべて遺言通りにいくとは限りません。

ですが、自分が相続をどのように考えているかという気持ちは相続人に伝えることができます。

また相続人の立場からしても、普段から交流があればよいですが、交流のない相続人同士が財産の話をするというのはなかなか難しいものです。

遺言があればその遺志に従い相続を考えることができます。

当事務所では遺言の作成のサポートもしております。財産目録の作成から、遺言案による相続税のシミュレーションなどを行うことが可能です。頭の中で漠然と考えるより、資料と数字で実態を把握することでより具体的に考えることができるようになります。