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10年後に結果が出る相続対策

以前、ご自身で会社を経営している社長が相続の相談に来られました。現在の税理士の先生が高齢になってきたこともあり、別の先生を訪ねてみようと思い当事務所にお越しになったようです。当時、相続対策のお手伝いをしたのですが、10年以上の時を経てその結果が出ました。今回はその対策内容と成果についてお伝えします。

財産の概要と心配事

ご相談者の社長は、ご自身の相続税額がどれくらいになるのかが心配で、おおよその納税額を知りたいというご要望がありました。

そのため、まずは相続シミュレーションを実施することにしました。

財産については、不動産が数か所、金融資産、経営している会社の株式という構成でした。
生命保険も納税資金のために加入されていました。

相続シミュレーションの結果、相続税の総額は数千万円になることがわかりました。

事前に相続のシミュレーションを実施したことにより財産内容をしっかりと把握ができ、納税予測もでき、結果安心していただくことができました。

このような現実が見えた結果、遺産分割対策の重要性が浮き彫りになりました。
その結果、遺産分割対策についてもきちんと検討しましょうという流れになりました。

遺産分割対策の前に相続対策を

遺産分割対策を行う前に、まずはこれからできる相続対策を実施していくことになりました。
シミュレーションのご報告の際に、ご家族の皆様ともお話をさせていただき、相続対策もしっかりやりましょうとなったからです。

最初に話にあがったのが、会社の株式についてです。
社長1人が株主でした。そのため、後継者の長男に毎年株式の贈与をしていくことになりました。

当時は経営されている会社の状態が厳しく、株式評価額も低い状況でした。
将来業績が回復し株式評価額が上昇することが想定されるため、上昇する前に長男にすべて贈与することにしました。
無事数年で株式を贈与することができました。
今回は偶然株式の評価額が低いタイミングだったため、うまく贈与をすることができました。

仮に評価額が高かった場合はどうでしょう。
その場合は、相談当時はありませんでしたが現在は「特例事業承継税制」があり、一定の要件はありますが、後継者に株式を贈与や相続をする際に、その株式に係る贈与税や相続税を猶予することができます。事業承継がスムーズに行える税制がありますので、その利用をご検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、「特例事業承継税制」は期限がありますのでご注意ください。

また、社長には娘様が2人いるため、2人には株式ではなく110万円の現金を毎年贈与されました。110万円は贈与税が非課税になる金額の上限です。子供に不公平がないように配慮をされておりました。こちらも数年間贈与をされ、結果、財産額を減少させることができました。

いよいよ分割対策へ

相続対策は上記のように行いましたが、同時に遺産分割についても話し合いを行うことができました。
家族全員が揃い、将来のことについて皆が意見をしっかり述べることができました。

不動産のなかに、娘様2人がそれぞれ自宅を建てている土地があります。
娘様2人はその土地が相続できればいいとの話でした。
余裕があれば相続税が支払えるだけの預貯金ももらえたらありがたいとのことでした。

続いて、長男と社長の奥様が話をされました。
不動産は他に賃貸アパートが3か所、社長と奥様と長男が同居している自宅があります。
奥様としては、社長の亡くなった後、自分の生活が困らないように、賃貸アパートも自宅もすべて相続したいと話をされました。

長男も自分の母の言う事なので特に反対もしませんでした。相続税も配偶者が相続するものについては相続税がかからないでしょうと話もされました。

確かに奥様が相続するものについては相続税が控除されます。奥様の法定相続分、もしくは1億6,000万円までは控除となります。ただし、奥様が亡くなった後のことを考えると、今回奥様に多くの財産を相続されることがよいかどうかは検討する余地がありました。

家族の皆さんで話し合った分割案をもとに、奥様が亡くなった場合の相続税も試算をしてみました。当然財産を相続されるので相続税も発生します。また、社長の生命保険の受取人が奥様になっていました。その保険金額が3,000万円でした。社長の相続の際は配偶者控除のおかげで納税が少なくなり残される金融資産の減少はほとんどありません。

しかし一方で奥様が亡くなった際の財産は相続した財産そのままが残ってしまうことになります。相続税額も高額になってしまいます。

そこで、社長と奥様の万が一の相続税額合計が一番低く抑えられる遺産分割案はどのようなものかを検討してみました。

奥様が亡くなった際、相続税の基礎控除額が3,000万円+600万円×3人(相続人の数)で4,800万円となります。奥様の財産が4,800万円以内になるように社長の相続の遺産を相続すれば、奥様が亡くなった場合、相続税は発生しません。そうすることで社長と奥様死亡の相続税額が低くなる試算となりました。

社長の亡くなった際には、娘2人には2人が住んでいる土地を。残りのほとんどを長男に相続させることにします。金融資産などは分割しやすいものは奥様に相続してもらいます。そうすることでトータルの相続税額が一番低くなることを伝えました。

最後に、長男の納税資金のことについても触れました。社長の生命保険の受取人を奥様ではなく長男に変更し、それで納税をしてはどうかと提案しました。奥様が受取人であると、社長の相続税は配偶者控除のおかげで納税がなく、保険金はそのまま奥様の財産にプラスされます。

もちろん生活費等で今後消費されるとは思われますが、残った金額は相続税の対象となり、結果相続税が発生してしまうことになりかねません。長男を受取人に変更し、その保険金で相続税を納税しても一部残ると思われます。その残ったお金を長男が生活費として同居する奥様に使うのは問題ないことを話しました。

奥様は自分の生活を不安に思われておりましたが、長男が相続する賃貸アパートの収入や保険金の残りで、今までと変わらずに生活することができることを話されたところで安心されました。社長と奥様の相続で、一番財産が残り皆が納得できる遺産分割案にすることが決まりました。

十数年後の実際の相続の結果は

それから10年と少し経ったところで、社長の相続が実際に起こりました。
事前に話をしていた家族全員で考えた通りの遺産分割を行い、相続税も納税も済ませました。

奥様が亡くなる際も相続税を気にする必要がないため、今後もゆっくり生活を楽しめると奥様がおっしゃっていたのが印象的でした。


今回は生前から相続対策を実行すると同時に、どのように遺産を相続人で分割するかまでをも検討できたことで、大事な財産を大きく減らすことなく皆が納得する形で相続することができた良い事例となりました。


弊社のブログでは何度も事前の対策、早めの対策が重要と記載してきております。
くどいかもしれませんが、本当に対策は早ければ早い方がやれることが増えます。

少しでも相続のことが気になりましたら、まずはシミュレーションだけでもやってみてはいかがでしょうか。頭で考えるだけでなく、実際にシミュレーションをしてみることで、不思議と相続の方向性が見えてきますのでおすすめしております。