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相続における預貯金管理の注意点

年齢を重ねるとお金の管理も大変になってきます。出歩くのが大変、物忘れが多くなってきたといった理由で預金通帳を身内に預けて管理をお願いすることはよくあることかもしれません。その際に注意しないといけないのがその管理の仕方です。お金の出し入れの仕方が相続に大きく影響する場合があります。今回は3つ事例をもとに注意点をお伝えします。

相続人がしっかり管理していたケース

母が亡くなったと長女が相談にみえました。
相続人は3姉妹です。

母は長女と同居しており、次女と三女は長女に家のことを全て任せていました。

財産を確認したところ相続税が発生する状況です。
生前から長女が預貯金の管理をしていました。

預金通帳をもとに預貯金の流れを確認していくと、定期的に引き出すお金については「生活費」の記載があり、振込したものや、出金したのちに現金で支払ったものについてもその明細を記載してありました。

遺産分割協議で3人に集まっていただき、財産の説明や預貯金の管理状況を説明いたしました。
次女、三女は長女を信頼していたようで、預貯金の管理については一切問題視することはありませんでした。

長女と同居している母が生活費を出すことはなんの問題もありません。
不明な出金もなく特に相続財産に計上するようなものはありませんでした。

一般的にはこのように管理されている家庭が多いのではないでしょうか。
このような相続の場合は問題になるようなことはございません。

相続人が管理しきれていなかったケース

母が亡くなったと長男が相談にみえました。

相続人は長男一人で、会社を経営されている方でした。
打ち合わせにはしっかり時間を取っていただきましたが、大変お忙しい方でした。

母の預金通帳は長男が管理をしていたとのことでしたが、確認してみると、未記帳明細が一定数を超えた場合に生じる一括記帳などが見受けられました。

この場合は、金融機関で取引履歴明細を請求していただきます。
発行手数料が発生してしまいますが、預貯金の流れの確認をするために必要となります。

取引履歴を確認したところ、50万円や100万円といった金額の引き出しが多数ありました。
長男に使途などを確認すると内容は曖昧で、母に渡したものや、会社に貸し付けたもの、自分で使用したものがあるとのことでした。

母に渡し生活に使ったものであれば特に問題ありません。ですが会社に貸し付けたものは相続財産として認識する必要があります。また、自分で使用した場合も内容を確認し、相続財産として計上する必要があるか検討しなければなりません。

会社に貸し付けた金額の確認は、母の通帳から出金された日付と会社の帳簿で入金された日付を確認し、日付が合致するもの、または近いもので特定を行いました。

出金額が少額なものは母のために引き出して渡していたとのことで、それ以外は長男自身が利用したものとなります。その内容を確認すると、自分の交際費に利用したとのことでした。そのため相続財産として計上すべきと判断して財産に入れました。

預金の財産額は、亡くなった日の残高証明で確認しますが、そこに記載されている額だけではありません。取引の内容を確認し、財産として計上すべきものは加算します。

幸いにもこのケースは相続人が1人で揉めることはありませんでしたが、相続人が複数いる場合には注意が必要です。

別の相続人が生前にお金を使っていたケース

父が亡くなったと二男が相談にみえました。
相続人は、長男と二男の二人です。

生前、長男と二男は父と別居していましたが、父が寂しくないように時々自宅に顔を出しておりました。この時々顔を出していた時に行っていたことが今回のポイントとなります。

財産は不動産だけでも相続税が発生する状況でした。

預金通帳をもとに預貯金の流れを確認していくと、数か月に1度100万円の出金が繰り返されていたことがわかりました。二男にこの使途を確認すると、預貯金は父本人が管理をしていたのでわからないとのことでした。

二男には一切心当たりがないため、今度は長男にこの不明出金について確認を行いました。
すると長男から回答がありました。長男は、自宅に顔を出した時に父を連れて金融機関へ行き、引き出したお金を受け取っていた、とのことでした。

この金額について確認をした結果、贈与ではなかったため長男への貸付金として財産に計上することになりました。

遺産分割協議についても、長男は自分に対する貸付金を相続することになります。
既に使用したお金を相続することになり、実際には手元には残らず寂しい相続となりました。

このように亡くなった方のお金を相続人が使用してしまっているケースは、相続人の間でもめ事に発展することがあります。他の相続人に疑義をもたれないように、しっかり管理してわかるようにしておきたいです。

まとめ

3つの事例をもとに、預金通帳の管理における注意点をお伝えしました。

相続税の申告の有無にかかわらず、預貯金の取引内容は確認されたほうがよいと考えます。
特に亡くなった方の預貯金の管理を誰が行っていたのかは重要になってきます。

相続人が複数の場合、今回のように誰かが亡くなった方の財産を生前に利用しているケースもあります。そこを見落としてしまうと相続税の申告がある場合、相続税の申告の財産が漏れてしまうことになりかねません。

相続税の申告がない場合でも、預貯金を生前に利用した相続人が、結果財産を多くもらうことになります。他の相続人にとっては不公平な相続となってしまいます。

当事務所では、預貯金の流れの確認を丁寧に行っております。そうすることにより、相続財産として計上しなければならないものが漏れることを防ぎ、またしっかり内容を検討することで財産に計上しなくてもいいものは計上しなくて済みます。それが正しい相続税の申告につながると考えているからです。

預貯金の管理において少しでも不安なことがありましたら気軽にご相談ください。
安心して家族の皆様が相続を迎えられるように、一緒に準備をしていきましょう。